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宮城道雄を聞く

宮城道雄を聞く

宮城道雄を聞く その十五

平成29年6月25日 宮城道雄を聞く その十五

1 手事物 初  鶯
尺八 吉田 伶翹箏替手 上田万里子
横川 浩子
箏本手 伊藤 恭子
石村 洋子

2 歌曲 せきれい・うわさ
尺八 望月 淳箏   安藤 政輝
歌   矢作 和美

3 手事物 秋の初風
尺八 中村 伶華箏   青柳美加乃
新堀 智子
三絃  福山 史子
伊藤 恭子
小林 明子

4 歌曲 浜木綿
尺八 松崎 伶慶箏   安藤 政輝
歌   矢作 和美

解説
1.初鶯
大正三年、宮城道雄二十歳のとき、朝鮮、現在の韓国に住んでいました。
そのときに作られた作品で、それまでの三曲合奏形式の曲とは違い、三絃は入れずに、箏が本手と替手に分かれ、尺八が入る技巧的で、華やかなメロディーとなっています。
歌詞は大和田建樹(おおわだ、たてき)の詩集「雪月花(せつげっか)」に収められたもので、鶯の初音をうたっています。

2.せきれい、うわさ
「せきれい」
大正一〇年、宮城道雄作曲。箏・尺八に北原白秋の詩を歌詞とする軽快明朗な歌曲です。せきれいはご存知のとおり鳥の名前です。山間(やまあい)の渓流など水辺に住み、色は黒と白または黒と黄色の鮮やかな色合いでくちばしと尾羽が長い鳥です。歩くとき長い尾羽を上下に敏捷に動かす独特の習性があります。箏と尺八で川の流れ、せきれいが元気よく尾を振る様子が巧みに描写されています。

「うわさ」は昭和三年作曲、箏と尺八による歌曲です。
歌詞は西条八十の「それはうわさというものよ 花が咲いても人の言う 鳥が飛んでも人の言う それはうわさというものよ」という詩を用いています。
軽快なテンポでスタッカートを使って弾むような感じを出しています。

3.秋の初風
昭和二十九年、宮城道雄作曲。
歌詞は石橋令邑(れいゆう)の作で、平家物語の祇王(ぎおう)の巻をつないだものです。
祇王というのは白拍子の名前で、今様(いまよう)を歌い、舞を舞う娘のことです。
祇王には祇女(ぎにょ)という妹がいました。祇王は当時権勢を誇る平清盛の寵愛を受け、祇王、祇女姉妹は羽振りの良い生活が続きました。そこへ若い白拍子の仏御前(ほとけごぜん)が現れ、姉妹は清盛に追われてしまいます。祇王、祇女と母親の三人は尼となって、嵯峨野の奥に詫び住まいをします。秋の初風が吹くころ、その庵の戸をたたく音がします。尼となった仏御前でした。祇王は昔の恨みも忘れ、以後四人で念仏三昧の生活を続けるのでした。

4.浜木綿(はまゆう)
昭和三十二年、宮城道雄作曲。
宮城道雄が作曲した曲は三百以上になりますが、宮城自身が作詞した曲はこの曲だけです。
温泉地として知られる和歌山県白浜の美しい景色を詠んだものです。
「浜木綿」の詩碑が、白浜の高原に建てられ、昭和三十一年六月四日に除幕式が行われました。その時に、宮城道雄自らが「浜木綿」を初演したということです。
しかしその二十日後に列車から連絡するという不慮の事故によって、宮城道雄は帰らぬ人となってしまうのです。宮城会では毎年、愛知県刈谷市にある事故現場に近くに建てられた「故宮城道雄先生刈谷供養塔」に於いて『浜木綿忌』を行っています。浜木綿忌というのは宮城道雄の最後の作品「浜木綿」にちなみ宮城道雄先生のご命日の六月二十五日に法要を行う行事のことをいいます。全国から大勢の宮城会会員が集まり、宮城道雄先生のご遺徳を偲んでいます。


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