平成30年6月24日 宮城道雄を聞く その十六
1.童曲 珠と鈴・夢見の眼鏡・春の風
尺八 大橋 伶晴箏・歌 山﨑 忍
2.手事物 奈良の四季
尺八 本嶋 伶秋箏 野田 陽子
諏訪みどり
主濱 沙紀
段返し 坂口みゆき
石村 洋子
3.特別番組 広門伶風作曲 想い出
尺八 大橋 伶晴
本嶋 伶秋
松本 陵風
須藤 伶承
4.特別番組 広門貞男作曲 早 雲
第一尺八 沖津 伶幸
松崎 伶慶
藍川 伶條
第二尺八 中村 伶華
荒井 伶彰
解説
1.「春の風」「夢見の眼鏡(ゆめみのめがね)」「珠と鈴(たまとすず)」
初めは童曲です。童曲というのは箏の童謡のことで宮城道雄が作った言葉です。
宮城道雄が童曲を最初に作曲したのは大正六年のことです。その時はまだ洋楽界で童謡の作曲は行われていませんでした。初めて童謡という名で発表された「赤い鳥童謡集」は大正八年のことでした。この童謡集が発表される五か月前の大正八年、宮城道雄は第一回作品発表会を開催し、童曲を加えています。
さて今日演奏する童曲は「春の風」「夢見の眼鏡(ゆめみのめがね)」「珠と鈴(たまとすず)」の三曲です。
作詞はいずれも葛原しげるで、江戸時代から明治時代に活躍した葛原勾当の孫です。
宮城道雄が作曲した童曲の大半がこの葛原しげるとのコンビで作られています。
「珠と鈴」は大正七年の作曲。木立から滴り落ちる雫を珠に見立て、谷間の流れを鈴に見立てています。「夢見の眼鏡」は昭和四年作曲。お父さんは眼鏡をかけておねんね。どんな夢を見ているのでしょう。「春の風」、大正九年作曲。知らぬ間に柳の芽がでておりました。いつの間に吹いていたのか春の風、今に野山の草や木に綺麗な花が咲くでしょう。春への思いを歌っています。
2.奈良の四季
昭和三十年宮城道雄による作曲です。
歌詞は奈良の歌人会津八一(あいず やいち)の歌集「鹿鳴集」の中から四首を四季の順に並べています。会津八一の幼女が宮城道雄に入門したころから、会津八一と宮城道雄は親交を深め、宮城道雄のために、会津八一自身が選んだということです。
万葉風の格調高い落ち着いた雰囲気の中に、仏教的な鐘の音や織物の描写で、古都奈良の四季折々を表しています。
3.想い出(おもいで)
伶風会の開祖、広門伶風師匠の作曲です。
広門伶風先生は福岡県直方(のうがた)市の出身で近くには遠賀川(おんががわ)が流れ、田園風景が広がっています。生前広門先生はそんな故郷の想い出を曲にしたと話しておられました。伶風先生に指導を受けた弟子四人で、伶風先生の尺八の音を偲びながら、
「想い出」を演奏いたします。
4.早雲(そううん)
昭和53年 広門(ひろかど)貞男(さだお)作曲。尺八ニ重奏曲。どこからともなくわき出る群(むら)雲(くも)、雲と雲が互いを追いかけ、時には重なり、また、時には離れていくうちに、その群雲が次第に濃く黒くなっていき流れて行きます。本曲風の作りに始まり、その雲を見つめている作者の心情を表わすかのような部分があり、また群雲に戻ってまいります。