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宮城道雄を聞く

宮城道雄を聞く

宮城道雄を聞く その十七

令和元年6月23日 宮城道雄を聞く その十七

1.歌曲 ひばり
尺八 望月 淳箏高音 山﨑 忍
箏低音 清水紗登美

箏・尺八二重奏曲 春の唄
尺八 望月 淳箏   清水紗登美

2.手事物 高麗の春
尺八 藍川 伶條箏   上田万里子
荒井 伶彰大谷 育代
三絃  福山 史子
横川 浩子

3.箏・尺八二重奏曲 うぐいす
尺八 細山 伶観箏   安藤  珠希

4.手事物 秋の庭
尺八 松本 陵風箏   瀧澤 憲一
大谷 育代
三絃  横川 浩子
小林 明子
諏訪 みどり

解説
1.ひばり・春の唄
歌曲に分類されるのが今日演奏する「ひばり」と「春の唄」です。
それまでの箏曲には、歌曲という概念はなく、春の唄が生まれた昭和二年ごろまでは洋楽の歌手が邦楽の歌を歌うということはなかった時代でした。当時随一のソプラノ歌手の永井郁子が自分のリサイタルで、宮城道雄の曲を歌って、大きな話題になったそうです。
「ひばり」の歌の旋律は陰音階を比較的素直に用いており、付点音符のついたリズムに特徴があります。哀愁をこめて春のゆうぐれのメランコリーを歌っています。
また「春の唄」の歌詞は島崎藤村の詩を使っており、季節の春を人生の青春時代にたとえた思いを歌ったものです。

2.高麗の春
曲名の高麗(こま)は、昔の朝鮮の呼び名ですが、明治の末に植民地化され、多くの日本人が朝鮮に移住しました。そうした中に宮城道雄や琴古流尺八家の吉田晴風(よしだ、せいふう)、都山流尺八の石橋令邑(いしばし、れいおう)がいました。この「高麗の春」という曲は石橋令邑の詩に、宮城道雄が曲をつけたもので、朝鮮の田舎の冬から春にかけての情景を詠っています。朝鮮の冬は寒さが厳しく、体の中を風が吹きぬけるような感じがしたそうです。待ち遠しい春がやってきて、山の雪が溶け、谷を流れた水が川のせせらぎになります。岸辺では白い布を岩の上において、棒で叩いて汚れを落とす水砧の音がします。

3.うぐいす
尺八と箏のために書かれた純器楽曲で、新春のうぐいすを表現しています。鶯の鳴き声を模した旋律がたくさん入っています。尺八のパートにはスタッカートの奏法が思い切って使用されており、難曲の一つであります。筝、尺八とも非常に技巧的で、速いリズムで演奏されます。

4.秋の庭
昭和十一年作曲、箏・三絃・尺八による手事物です。歌詞は万葉集の安倍王(あすかべのおおきみ)の和歌で、天平勝宝(てんぴょうしょうほう)九年の豊明節会(とよあかりせちえ)を詠んだものです。豊明節会というのは豊かに明るい、節分の節に会合の会と書きます。宮廷行事の一つで、毎年秋に行われた新嘗祭(にいなめさい)、現在は大嘗祭(だいじょうさい)と呼ばれています。天皇がその年最初にとれた米を紙に供え、ご自身も召し上がる儀式で、最後の行われる盛大な饗宴が豊明節会です。節会とは饗宴のことで、五節舞(ごせちのまい)という舞が舞われます。舞姫は毎年貴族の令嬢の中から四人が選ばれます。題名の秋の庭というのは宮殿の南庭(なんてい)、南の庭のことです。歌詞は「乙女らが 玉裳(たまも)すそ引く この庭に 秋風吹きて花は散りつつ」というもので、美しい衣装をまとった舞姫たちが華やかに舞い踊った庭にも秋風が吹いて、花が散るというものです。


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