令和4年6月26日 宮城道雄を聞く その十八
1.手事物 虫の武蔵野 |
尺八 |
松崎 伶慶 |
箏 |
伊藤 恭子 |
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横川 浩子 |
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三絃 |
猪原 由香 |
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關 惠子 |
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小林 明子 |
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坂口みゆき |
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2.合奏曲 満州調 |
尺八 |
大橋 伶晴 |
第1箏 |
石井まなみ |
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増田 公彦 |
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澤田 颯太 |
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望月 淳 |
第2箏 |
安藤 珠希 |
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杉本 祐一 |
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清水紗登美 |
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十七絃 |
山崎 忍 |
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胡弓 |
安藤 政輝 |
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打物 |
伊藤 駿汰 |
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3.合奏曲 北海民謡調 |
尺八 |
松崎 伶慶 |
第高音 |
上田万里子 |
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横川 浩子 |
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吉清みちよ |
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庄田 邦彦 |
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箏低音 |
伊藤 恭子 |
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關 惠子 |
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津野 久幸 |
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十七絃 |
青柳美加乃 |
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4.箏・尺八二重奏曲 春の海 |
尺八 |
松本 陵風 |
箏 |
安藤 政輝 |
解説
1.虫の武蔵野
平安時代、殿上人(てんじょうびと)たちは、秋になると嵯峨野でとらえた虫の姿や鳴き声を競う「虫えらび」という遊びに興じました。その「虫えらび」をしのびながら、武蔵野の虫の音色に耳を傾ける様子が歌詞に詠まれています。歌詞の中では「まつ虫」「きりぎりす」「鈴虫」「くつわ虫」など様々な秋の虫が登場します。
前奏には、雅楽に用いられる「ひちりき」の手が取り入れられています。つづく前唄は「虫えらび」をしのぶような優雅な旋律で、雅楽の「横笛」の旋律が含まれています。
手事、後唄では、それぞれ楽器が異なる手で虫の音を表しており、秋の武蔵野の虫の調べの風情が表現されています。
2.満州調
「満州調」は、宮城道雄が演奏旅行で満州各地を回った時に、肌で感じたその地の気分を表現したものです。この曲が作曲された前々年の三月には、満州国の建国があり、国民の大陸への関心が高まっていたころの作品となります。
箏二部、十七絃、胡弓、尺八二部、鉄琴、打物による合奏曲で、中国風の旋律と情緒が取り入れられています。特に中間部の胡弓は哀感を持った美しいメロディーとなっています。
3.北海民謡調
この曲が作曲された昭和二十九年、宮城道雄は北海道へ演奏旅行をしました。
その折り、軽快で華やかなソーラン節と、民族的哀愁を持つ江差追分(えさしおいわけ)を変奏曲にまとめ、即興的に演奏しました。
それを後に改作して、この北海民謡調を作ったといわれています。
力強い前奏から、ソーラン節の主題と変奏、中ほどは打ち寄せる波を思わせます。
尺八が民謡のメロディーを奏でます。
4.春の海
箏と尺八の合奏による純器楽曲で、昭和五年の勅題「海辺の巌(いわお)」にちなんで作曲されたもので、宮城道雄がかつて春の瀬戸内海を船で通った時の印象をもとに作曲されたと言われています。
昭和五年一月二日にラジオ放送で流れたのが正式な初演で、その後、昭和七年にフランスのヴァイオリニスト、ルネ・シュメーと日比谷公会堂で共演した際に大きな話題となりました。客席で鑑賞した川端康成が、連載中の新聞小説の中で、その時受けた感動に言及したほどで、のちに海外でもレコードが発売されました。
曲の構成は三部形式をとり、第一部分は緩やかな波の感じで始まり、舟ばたに当たる小波の音、カモメの鳴き声やその飛び交うさまなどが織り込まれています。第二部はテンポを速め、勇ましい櫓拍子で漁船の行き交うさまが描写されています。第三部は第一部の反復で、再びのどかな春の気分に帰ります。